まいぷれ編集部が行く!イソカナ活動日記♪
ライター:磯野 八景
2022年のNHK大河ドラマは、三谷幸喜さんが脚本を手がける「鎌倉殿の13人」。
今、話題を集めている鎌倉ですが、実は金沢区にも、鎌倉時代の人物にゆかりのあるところがたくさんあります。
今回は、『イソカナ的鎌倉殿の歩き方』と題し、鎌倉時代の登場人物にまつわるスポットを2つの散策コースでご紹介します。第一弾は秘境編。朝夷奈切通の旅へ出かけましょう。

皆さんも横浜からアクセスしやすい鎌倉は、馴染みのあるエリアではないでしょうか。鶴岡八幡宮をはじめ神社仏閣が多く建ち並び、海水浴場やおしゃれなカフェなど、コロナ禍前は年間約1900万人が訪れる人気の観光地です。
そんな歴史もある鎌倉は、三方を山や谷に囲まれ、南に遠浅の海が広がる敵が攻め込みにくい地形をしています。大きな通りを四方に作らなかった故、「鎌倉七口(かまくらななくち)」と呼ばれる切通しが放射状に7カ所設けられました。そもそも切通しとは、人の往来や物流のために山を切り崩した路のことです。道幅は狭く封鎖しやすいこともあり、通過するのに手間取る敵陣を上から矢で射るのに効率のよい構造となっています。

朝夷奈切通は、一説によると和田合戦(1213)で活躍した朝比奈(三郎)義秀が一夜で切り開いた切通しであったという伝説が残されていますが、幕府の歴史を記録した『吾妻鏡(あずまかがみ)』によると、仁治2年(1241)に鎌倉幕府3代執権の北条泰時が監督・指揮をとり、鎌倉と六浦を結ぶ重要な交通路として着工させました。
北条泰時自らも現場へ出向き自身の乗馬に土石を運ばせ、志気を上げていたとも云われています。
また、六浦や釜利谷で生産された塩もこの切通しを通って鎌倉に入ってきたことから、別名「塩の道」とも呼ばれ今に伝えられています。そんな六浦も、関東地方をはじめ唐(海外)への物資集散の拠点として政治的・経済的に重要な港であったようです。
この朝夷奈切通は、鎌倉七口の中でも標高のある険しい切通しであったようですが、鎌倉の地勢と外部との連絡状況を示す貴重なものとして、国の史跡に指定されています。実は、この朝夷奈切通は2019年秋の度重なる台風の被害を受け通行止めになっていたのですが、昨年12月に通行が再開されました。皮肉なことに時を同じくしてコロナ禍と共に閉ざされた中世の古道と言っても過言ではないでしょうか。
街では味わえない大自然の中、鎌倉時代から残された風景と鎌倉殿たちの温故知新の旅へタイムスリップしましょう。

横浜市金沢区朝比奈町側の入口付近には、供養塔や往来の無事を祈ったのでしょうか石仏も立ち並びます。

切通しの上を横浜横須賀道路が通っています。ここを抜けると金沢区にいることを忘れてしまうくらい神秘に包まれる秘境感に一気に引き込まれます。

機械や工具もそれほど充実していなかった鎌倉時代にどのようにしてこのような岩を開削したのでしょうか。これらの大規模な切岩(人工的な崖)は、切通しの構造を良く示すものです。時折、普段街中では見かけない植物にも遭遇しながら今でも生々しく感じられる削られた跡に苔生す岩間を突き進んで行きます。
朝比奈町の入口から400メートルほど進むと、熊野神社に向かう分岐にさしかかります。源頼朝が鎌倉に幕府を開いたときに守護神として熊野三柱大明神を請じ迎えたとされ、北条泰時がこの切通しを切り開く際に社殿を建立したとも伝えられています。また、鎌倉から見て艮(うしとら/丑寅)、すなわち北東に当たる鬼門であることから祀られたとも云われています。

熊野神社
分かれ道から熊野神社へ続く山道を突き進むと大きな鳥居が現れます。静寂した空間と一体となり厳かな「無」になる瞬間を迎えます。鳥居を抜け一歩一歩かみ締めるかのように階段を上がると拝殿が姿を現し、奥の石段をさらに進むと本殿へと続きます。神主も常駐していないためか賽銭や奉納を辞退するようにと記された案内板を見ると神様と一対一で向き合えるパワースポットのようにさえ感じます。
やぐら群
朝夷奈切通には、このようなやぐら群(鎌倉時代頃の墓所、納骨堂跡など)の他、防衛優先だった鎌倉幕府の特徴を表す切岸や平場など、当時の政略を感じさせられるところも多く点在します。
朝夷奈切通に戻り先へ進むと頂上付近でしょうか、切り出された後の岩盤に全長150センチ程の仏様が掘られています。これは磨崖仏と呼ばれ平安時代後期から鎌倉時代にかけ盛んに造立されていました。ここを抜けるとなだらかな下り坂となり埼玉県秩父の長瀞で有名な岩畳のような路が続きます。

磨崖仏(まがいぶつ)
いつの間にか湧き水が染み出るところを歩き進めると、自然と小川が現れるエリアに入ります。ところどころ、水の溜まり場のようなところを横目になめらかな岩肌を滑るような透き通った清流を追います。
水の音が聞こえてきたら朝比奈の滝が切通しの終着点を知らせてくれます。この滝は、別名「三郎の滝」とも呼ばれ一夜にしてこの切通しを切り開いた朝比奈(三郎)義秀の伝説に由来しています。心地よい水の音が心と体をほぐしてくれます。

三郎の滝(朝比奈の滝)
三郎の滝を背に右へ少し進むと「太刀洗水」の立て札が見えてきます。ここには伝説があり、寿永2年(1183)源頼朝の命令を受け梶原景時が上総介広常を討った(暗殺)後、この湧き水で太刀の血を洗い流したと云われています。岩肌から湧き出るこの水は、鎌倉五名水の一つともされています。

落ちてくる水を辿ると祠のようなものも見受けられ、苔むしたその佇まいに時の流れを感じます。

今回のイソカナ的鎌倉殿の歩き方秘境編は、いかがでしたでしょうか。
鎌倉時代から変わらぬ景色と鎌倉殿たちのエピソードに溢れています。ぜひ、皆さんも通行が再開された朝夷奈切通の散策を楽しんでください。
なお、散策に際し苔生した濡れた岩場や湧き水が染み出ているぬかるんだ上を歩くので、普通のスニーカーでの散策は、おすすめできません。少なくともトレッキングシューズなどを準備した方が良いでしょう。また、前日や当日の天候チェック、日没やバスの運行時刻などにも注意しながら散策計画を立てましょう。携帯電話の電波も届きますが家族や知人などに山へ行くことを伝えておくと安心できます。朝夷奈切通の道中、座って休憩できる場所やトイレなどの施設がないことと、環境保全のためにゴミは必ず持ち帰りましょう。


《詳細情報》
朝夷奈切通:全長約1km
所要時間:約1時間30分(熊野神社を含めゆっくりと歩き散策)
朝比奈町側からのアクセス:金沢八景駅から京急バス、朝比奈バス停より徒歩約5分
鎌倉市十二所側からのアクセス:鎌倉駅から京急バス、十二所神社バス停より徒歩約10分
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