日本人は、海外に比べて睡眠時間の短さが目立ちます。.OECDの2018年の調査によれば、
日本は加盟国中最下位の7時間22分です。 厚生労働省の調査では、平均睡眠時間が6時間未満の人が、
2007年の29%から2018年は38%へ増加しています。
特にビジネスパーソンは総じて、睡眠不足に陥りがちです。
しかし「睡眠時間を削って働く」よりも「睡眠時間を1時間増やす」ほうが、圧倒的にパフォーマンスが上がると
いうことが、科学的にも証明されているのをご存じでしょうか。
睡眠時間を削ると脳のパフォーマンスが著しく低下します。
具体的に、6時間睡眠を14日間続けると48時間徹夜したのと同程度の認知機能になります。
別の研究では、6時間睡眠を10日間続けただけで、24時間徹夜したのと同程度の認知機能になるという研究も
あります。これは、日本酒を1〜2合飲んだときの「酔っぱらい状態」での認知機能に相当します。
つまり、毎日6時間睡眠を続けている人は、「毎日徹夜明けで仕事をしている」「お酒を飲みながら仕事を
している」のと同じくらい低いパフォーマンスで、日々仕事をしているということです。
睡眠を削ることで、集中力、注意力、判断力、実行機能、即時記憶、作業記憶、数量的能力、論理的推論能力、
気分、感情など、ほとんどすべての脳機能が低下することが明らかにされています。
睡眠不足の人は、本来持つ自分の能力の1〜2割も低い能力で、毎日仕事をしていることがわかっているのです。
がんばっても仕事がはかどらない。ミスや失敗が多く叱られる。疲れやすい。感情が不安定。
人間関係も悪化する……。睡眠時間を少し増やしただけで、仕事や人間関係の悩みが解決するとしたら、
どんなに素晴らしいことでしょう。
そこでやっていただきたいのが、「1週間限定、睡眠時間1時間アップチャレンジ」です。
今日から、「ずっと」睡眠時間を1時間増やさなければいけない、というと「難しい」と感じるかもしれません。
なので、「1週間限定」でいいので、いつもより1時間早く寝て、1時間だけ睡眠時間を増やしてみるのです。
スマホ、テレビ、ゲームなどの余暇時間を少しだけ削る、帰宅後の家事も1週間だけサボッてみる。
1週間だけなら、できるのではないでしょうか?
「認知機能が下がっている人は、自分の認知機能の低下に気付かない」という研究があります。
慢性的な睡眠不足による仕事のパフォーマンス低下には、自分では気付けないのです。
仕事が終わらない、残業が多い、睡眠時間を削らざるを得ない、そして疲労やストレスもたまり、
何をやってもうまくいかない…それは単なる「睡眠不足のせい」かもしれません。
1時間睡眠を増やすだけで脳の機能は著しく改善します。仕事のパフォーマンスは上がり、
仕事の生産性は上がります。仕事のミスも減り、仕事は効率化し、仕事が早く切り上げられるようになり、
そこで睡眠時間が確保できるようになります。
「しっかり眠ると、こんなに調子がいいんだ」という気付きを得るだけで「睡眠改善」へと、
大きな一歩を踏み出すことができるはずです。
また「仮眠」をとるのも一つの手です。
仮眠によって、日頃の睡眠不足がなしになるわけではありませんが、「集中力低下」などの脳のパフォーマンスを
改善し、健康に対する害を減らすことが可能です。
アメリカのNASAの研究によると、26分の仮眠によって、仕事効率が34%アップ、注意力が54%アップした
そうです。アメリカでは、Googleやナイキなど、仮眠室や睡眠マシンを導入する企業が増えています。
では仮眠の場合、何分眠るのがいいのでしょう?
仮眠についてさまざまな研究がありますが、20〜30分が効果的と考えられます。
30分を超えると効果が徐々に悪くなり、1時間を超える仮眠は、脳のパフォーマンス的にも健康的にも悪影響を
及ぼします。1時間を超えると深い睡眠に入ってしまうため、その後、目を覚ましてもすぐに脳は正常の
パフォーマンスには戻りません。また、1時間を超える仮眠は、夜の睡眠に悪影響を及ぼします。
仮眠の健康に対する影響ですが、1日30分以下の仮眠が、アルツハイマー病の発症リスクを5分の1にするという
研究があります。しかし、1時間以上の仮眠は、アルツハイマー病のリスクを2倍に増加させます。
働く男性の場合、週に3回以上、毎回30分の昼寝をする人は、死亡率が37%低く、心臓病での死亡率は64%も
低くなります。また、糖尿病に関しても同様で、毎日30分程度の仮眠をとる人は、糖尿病のリスクが低く、
逆に1時間以上の仮眠をとる人は、糖尿病のリスクが45%高くなる、という研究があります。
1日30分前後の仮眠は、疲労回復、認知症予防、心臓病予防、糖尿病予防、身体の健康という観点からも、
非常にいい。1時間を超える仮眠は、健康によくない、といえます。
コロナ禍でリモートワークをされている方は仮眠が取りやすいかもしれません。季節的にも今の時期は眠りに
つくのに最適です。試してみてはいかがでしょうか。