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企業訪問

株式会社蔦金商店 横浜でナンバーワンの海苔店に

海苔問屋の蔦金商店

2016/06/01

横浜中央市場入口の手前に位置する蔦金商店は、社名とおり建物をつたが取り巻いている。歴史をうかがわせるのも当然、創業は明治27年というから、横浜に海苔問屋を開業して120年を超える老舗である。

「需要は増えているのに生産量は少ない」? 業界の現状

5代目社長の出川雄一郎代表取締役
5代目社長の出川雄一郎代表取締役
出川雄一郎代表取締役は5代目社長。

「店は中央市場外に在るが、市場内にも店舗を構えています。お客様は寿司店、蕎麦店、飲食店が中心で、業務用として海苔を買われて行かれます」

「しかし」と出川社長は続ける。「近年は、築地市場まで行かれたり、インターネットを利用されるお客様が増え、中央市場に勢いがなくなり、私どもにもその影響が出ています。お得意様にお聞きしますと、市場に来られる頻度が、隔日から週一に減り、その間はネット注文で補っているとのことでした」

蔦金商店は、当初は東京湾産の海苔を中心に扱っていたが、生産量の減少により、現在は宮城、東京湾、伊勢志摩、瀬戸内、有明と幅広く扱っている。

「海苔の入札は11月から4月までの半年間に行われます。生産量の多い産地では、1回の入札で1200~1300種類の海苔が並びます。その中からお客様に合う海苔を選び出さなければなりません。生産地を絞り込むとか、なかには目利きで即決していく人もいます。生産量が多いのは有明海で、国内全体の生産量の約4割を占めます。なかでも佐賀県が全国一の生産量で、次いで瀬戸内の兵庫県ですね」

また、「青海苔は水温の関係から11、12月にしか採れないので、青混ぜは早く仕入れないと寿司店などの需要に応えられなくなります。需要は増えているのに生産量は少なく、入手は難しくなっているのが現状です」

海苔は100枚一束で、海苔の等級は1等、2等、3等とランク付けされる。1枚の重さは平均3gでそれを基準に3g以下を軽の等級、3g以上を重の等級、また、穴のあるマルの等級、破れの等級などがある。草の柔らかい海苔は寿司店で、厚いしっかりした海苔はラーメン店で使われる。

味付け海苔について聞いてみた。

「関東では焼き海苔、関西では味付け海苔が好まれます。当店の味付け海苔は焼き海苔同様、有明産の高級品で、関西のお客様からも『おいしい!』とお褒めの言葉をいただきました。味付け加工は宮城県の塩釜に在る親族会社の石井商店で行っています」

味付け海苔の品質にこだわるのは、味付け海苔のパッケージに社長の弟であるタレントの出川哲朗さんが使われているからだ。「店頭で哲朗のパッケージを入れた自撮りをされるお客様や、ここが出川のお店という声が聞こえたりするので、店に協力してくれる哲朗に応えて高級味付け海苔を目指しました」

蔦金商店では椎茸、昆布、かつお節も扱っている。

「祖母の実家が、横浜でかつお節問屋だったことから、蔦金商店でも扱うようになりました。店頭にかつお節を並べていますと、若い人が興味を持たれますが、削るカンナがない。それではお客様に申し訳ないので、近々カンナも置くつもりです」

そのほか、海苔の原種や浅草のりの復興など興味深いお話しもうかがったが、スペースの都合でまたの機会に。

最後に今後の計画と課題について聞いた。

「横浜中央市場が衰退しているので、市場を元気づけようと、5年前から水産仲卸業者と関連組合が協力して第1、第3土曜(8時~11時)に市場を開放して朝市を開いています。市場の周辺は高層マンションが立ち並ぶようになりましたので、地域住民の方を取り込み、買い物に来ていただけるようになれば、市場外の店舗の活性化にもつながります。

当店は業務筋が中心ですが、先述のように築地やネットに顧客が流れていますので、地元の方を大切に、小売りにも力を入れた営業を展開していきます。それには顧客満足度の向上が重要で、品質第一と考え、それがお客様からの信用につながると思っております。

百貨店の催事や地元のイベントなどにも出店し、お求めやすい環境を作って、地元ヨコハマで、海苔といえば蔦金、と言われるよう、ナンバーワンを目指してまいります」
住所 横浜市神奈川区栄町89
HP 株式会社蔦金商店