地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、横浜市神奈川区の地域情報サイト「まいぷれ」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

横浜市神奈川区の地域情報サイト「まいぷれ」横浜市神奈川区

企業訪問

中村五郎商店―おとめ納豆―

納豆一筋、横浜の老舗納豆屋

2015/10/21

昭和25年創業、中村五郎商店の横浜のおとめ納豆。
今回は三代目の中村弘さんにお店を受け継ぐまでの経緯や納豆への想いをお聞きしました。

生まれた時から納豆に囲まれた暮らし

現店主中村弘さんは納豆屋に生まれ、納豆に囲まれて育ちました。
納豆は今でこそ体に良い・健康食品と言われていますが、当時は“貧乏人の食事”という風潮が強く、納豆屋に生まれたことが嫌だったと言います。

納豆屋を継ぐ選択はしなかったものの、奇しくも同じ発酵食品であるヨーグルトの会社に勤めることになった中村さん。
そんな中村さんが納豆屋を継ぐまでに至ったのは、海を越えた異国で納豆と再会したことがきっかけでした。

ハワイでの再会

ヨーグルトの営業販売の仕事を続けていると、徐々にスーパーの裏側やバイヤーの事情について深く知っていくことになります。
なるべく安く仕入れたいスーパー、利益を上げたいバイヤー…。
営業ノルマも重なり、憔悴してしまった中村さんは7年間勤めたヨーグルト会社を退職、語学留学と自分探しを兼ねハワイへと渡ります。
何度かハワイ通いを繰り返すうち、ある日ハワイで販売されている納豆に出会い、食べることになりました。
その納豆は中村さんの知っている納豆とは異なり、糸や豆の状態などから、納豆らしさがないと感じたのだそうです。
しかしその納豆を食べたからこそ、帰って自分でも作ってみたくなったと言います。

2代目・父の時代

父の故・中村貞夫さんに授与された技能功労賞<br>納豆作りの技術を賞されたとのこと
父の故・中村貞夫さんに授与された技能功労賞
納豆作りの技術を賞されたとのこと
納豆屋を継ぐ決意をしてからおよそ5年の間、2代目である父と一緒に働くことになりました。

今では中村さんが運営する中村五郎商店のみとなってしまった横浜の完全手作り納豆屋も、2代目の時代には数多くありました。
その当時は小学校を卒業してすぐ働ける時代。2代目である父はすぐに納豆屋を継ぎました。
当時は納豆屋が乾物屋(食料品屋)に納豆を届けに行っていたそうですが、各納豆屋の縄張りがあり、その縄張りの乾物屋に納豆を売りに行ってしまうと同業者と鉢合わせして衝突してしまうこともあったのだとか。
「小学校を卒業して間もない14歳ほどの子供にはその縄張りがわからず、業者の大人に理不尽に叱られるようなこともあった。それが怖かったし、厳しかった」
滅多に仕事の話はしなかった父の、数少ない仕事に関するエピソードだったと言います。

こだわりの包装紙・伝統ろう紙

実際のおとめ納豆の包装紙
実際のおとめ納豆の包装紙
納豆屋として、代々「これだけは残しなさい、残せないなら商店を畳みなさい」とまで言われた包装紙、ろう紙。
おとめ納豆の場合、賞味期限を2週間過ぎたものでも問題なく食べられたほどだと言います。

日本の伝統的なこの紙は、古くから鮮度を保つための技術として伝えられてきました。
時代の流れの影響もあり、一時製造が困難に陥りましたが、無事現在へと継承することができました。
「大豆と納豆菌にとってよい環境を整えてあげることができる紙です。あとは菌の力で発酵するのを待つだけです。それだけ、菌への敬意を持って営んでいます」

納豆の豆の生きた感じをそのまま保つことができる紙として、これからも変わらずおとめ納豆の包装紙を担うでしょう。

納豆のさらなる可能性を――

料理教室で出会った大ど根性ホルモンさんのオーナーシェフによる納豆オムレツ<br>
料理教室で出会った大ど根性ホルモンさんのオーナーシェフによる納豆オムレツ
中村さんは新たな納豆の食べ方を生み出すべく、様々な試みを行っています。
納豆オムレツやチーズ入りの納豆パンにさつま揚げ。
町の料理人の方々と協力し、納豆製品の開発を進めています。
「においが強いということもあり、なかなか商品化とまではいかないのですが、これからも色々な試みに挑戦していければと思います」
納豆好きには嬉しい朗報。
新しい納豆製品がお店に並ぶ未来が見られるかもしれません。
パン生地に納豆とチーズに季節の地場産野菜をいれた<br>Pane di Tuttiさんの納豆パン
パン生地に納豆とチーズに季節の地場産野菜をいれた
Pane di Tuttiさんの納豆パン
7月10日、納豆の日限定!<br>藤棚商店街の今井かまぼこさんによるさつま揚げ納豆
7月10日、納豆の日限定!
藤棚商店街の今井かまぼこさんによるさつま揚げ納豆

中村さんからのコメント

世に数ある納豆オムレツの中でも大ど根性ホルモンさんのシェフの腕は超一流!
ふわっとしたオムレツを割るとトロォッとした半生の卵の中から歯ごたえのある納豆が。
他では味わえない逸品です。

Pane di Tuttiさんのチーズ納豆パン、これをいただくと改めて、納豆とチーズの相性の良さを感じます。
イースト菌と納豆菌の相性の悪さの壁を乗り越えて、まさに研究に研究を重ねて完成した逸品!
日本でもめったにお目にかかれない、世界中の人に食べて戴きたい納豆パンです。

今井かまぼこさんには商売で使っている油をダメにしちゃうんじゃないかという心配もよそに作って戴けました。
後日、やっぱり商店街中に「半端じゃなかったっすよ、あのにおい」との声が…。
チャレンジしてくださり、ありがとうございました。

編集部より

中村さんが語る姿からは終始納豆づくりへの自負が感じられました。
できた感じを確かめるため、自身で毎日食べているという中村さん。
ベストな状態のものを食べてほしい、自身で食べているものと同じ味を届けたい…。
そんな思いから、店頭販売しているものも賞味期限の2日前には新しいものに交換しているのだとか。
自身の作ったものに対する熱い思い、製造者としての誇りが窺えました。

取材の後日、取材陣におとめ納豆を味わってほしいと考えてくださり、なんと弊社まで納豆を届けに来てくれた中村さん。
実際のおとめ納豆は、弾力があり大豆のそのものの味が堪能できる、しっかりとした味わいでした。
皆様もぜひご賞味ください!

名称 中村五郎商店
住所 横浜市神奈川区西神奈川1-18-8(現在は小売りしておりません)
連絡先 hiroshinakamura@55.netyou.jp
HP http://home.netyou.jp/99/otome710/index.html
神奈川区での販売所 サカタのタネガーデンセンター横浜内サカタマルシェ